「今日モタノシクナイナ」
当時一人のうみべ女性タレント(利用者)がそうSNSでつぶやいた。
この一言に僕は凄く悩んだ。
彼女はうみべがオープンして2ヶ月後に、最年少18歳で仲間入りした女性。
最初の1年目はうみべの中心的なタレントとして大活躍な毎日を過ごしていたが、
2年目くらいからうみべに頻繁にTV取材が入りはじめたことや、
他のタレントたちが世間から爆発的に人気が出始めたことなど、
様々なことが重なって、
彼女は次第に自分に対して自身が持てなくなってしまったと僕は感じた。
そして、彼女はうみべに毎日通いながら、
毎日うみべの2階に引きこもるようになってしまった。
「今日モタノシクナイナ」はこの時につぶやかれたものである。
そんな彼女がうみべ引きこもり生活から抜け出し、
またうみべの他のタレントたちやお客さんたちと過ごせるようになるまでには、
約1年半かかった。
その軌跡を起こしたのは、ドン・キホーテのパーティーグッズコーナーに売っていた「パンダの被り物」であった。
「これ被れば、またみんなの前に出られるかも」
彼女からその言葉が聞けたとき、みんなの心が躍った。
その中でも彼女にいつも寄り添っていたタレント(職員)のミカさんは嬉しさでテンパってしまい、
「パンダの被り物」と一緒に、自分が被る用の「黒猫の被り物」まで注文してしまった。
こうしてうみべには、パンダの被り物を被った「パン田さん」と黒猫の被り物を被った「ネコ村さん」という不思議な生き物たちが常時生息することとなった。
最初は、うみべの日常風景にそんな異質な二人がいることが違和感でしかなかった。
しかし、みんなすぐに気が付いた「いないよりいたほうが絶対良い」と。
理由はその人ごとに違えど、以前の彼女のように「人前に出たく無い」と思いながら生きている人や、
部屋や自宅に引きこもっている人は、世の中にたくさんおられると思う。
全ての人に「外に出た方がいいよ」と僕は言うつもりは全くないんだけど、
もしもその中に「自分もなんとかして外に出てみたいな」と思う方がいたとすれば、
僕はその方に胸を張って、こう話すようにしてる、
「パン田さんって知ってる?」と。
『ため息の前に、うみべにおいでよ。』
2025/01/18 11:15