「前﨑さんまたなんですが…」
県の行政機関から電話が入った。今月に入って3回目だ。
『うみべの代表(前﨑)から自分は無視をされ続けている。改善が見られないから指導して欲しい』と、うみべの利用者と思われる方から通報があったとのことであった。
分かってる、どうせまた『オカピー』だ。
オカピーと僕は、今では利用者と施設代表という関係であるが、地元が一緒だということもあり、うみべができる20年以上前からの友達でもある。
そんなオカピーは嫉妬心の塊の様な男である。
友達の僕が誰か別の人と話しているだけでとにかく嫉妬する。
必ず会話の間に割って入って阻止しようとするのである。
うみべに気まずい空気が流れることが嫌だから、
僕はなるべくオカピーの前で他者と話さないように心掛けているのであるが、
そうは言ってもみんながここで普通に生活しているので、
オカピー以外の誰とも全く会話しないわけにはもちろんいかない。
そんな時オカピーは不安定になり発狂してしまうのである。
その都度、周りの職員も利用者もオカピーをなだめ、気持ちのケアを行いながら日々を過ごしているのだが、
オカピーには、その周り人たちの優しい気持ちなんてものはとうてい届かない。
そんなオカピーの唯一のストレス発散方法が
『うみべ代表の誹謗中傷』なのであるから本当に困ったものだ。
初めは、うみべの他の利用者に対して
「ここの代表の言うことは信用するなよ、嘘つきだから」といった悪口で、
その方と僕との心の距離を空けてやろうとする行為から始まり、
それだけにはとどまらず、
他利用者の保護者さん家族と僕を引き離そうと密告なような電話をかける行為、
僕を応援してくれる全国の方々と僕を引き離そうとネットへの誹謗中傷の書き込みへと発展。
そして最終的に行政機関に直接僕を訴えるといった手段で、
うみべごと僕から引き離してしまおうとの暴挙に出始めたのである。
このままじゃ僕の人生どころか、うみべに携わる全ての人たちの人生までグチャグチャになってしまう。
僕はこの案件に頭を抱えて毎日眠れなくなった。
そんな日に日にやつれていく僕の姿を見た時、オカピーはやっと正気に戻る。
「お前たち行政はうちの代表に何の文句があるんか!?そんなに虐待を疑うんなら自分の目と足でうみべを見に来てみろよ!僕の居場所を奪うなよ!」
正気に戻った心優しいオカピーは、今度は行政機関に対する苦情の電話をさらに上の機関に入れるのである。
「いや、訴えたのはあんたじゃないか」
誰もがそうツッコミを入れたくなる案件がひと月に3回も続いた。
初回は動揺の渦に沈んだ僕も、2回目には苦笑いに変わり、3回目にはもはやこの行為がエンタメに感じてきて、
ただただ周りと大笑いすることになった。
でも笑い飽きたので、たぶんこれから4回目5回目と続いた時には
「またオカピー?そっかー。それよりさあ…」とまるで呼吸をするかのように事態を受け止めるようになるんじゃないかな~となんとなく感じてる。
オカピーの存在は僕らを強くしてくれる。
こんなオカピーが、僕たちうみべには無くてはならない最高な存在だから、僕らはもう本当に困っている。
『ため息の前に、うみべにおいでよ。』
2024/12/04 23:07